偉大なミズゴケ様
- 2012/07/23 20:45
- Category: コケ日記
「造園とコケの関係は、近いようでそうでもないかもな」
最近の感想です。
★
日本庭園をはじめとする庭園概論ひとつとってみても、コケは必ず登場してきますし、
ガーデニングをするにあたり、「ピートモス」や「水苔」の登場回数はトップクラス。
水苔は、ラン栽培でも欠かせません。
しかし、こんなにも園芸界で引っ張りだこなのにも関わらず、
コケ庭のコケは「あくまでも庭の素材の一つ」。
日本庭園が嫌いな人にとっては、「コケ=日本庭園。じゃあ私には全く興味がない」という略図を描く人もいるようです。
ピートモスやミズゴケにいたっては、もはや「土や肥料のような認識でしかない」。
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コケの葉を一枚採ってじっくり観察、なんてしないし、コケの多様性や本来の姿をしるきっかけは、土いじりではなかなか縁遠いのかも。
しまいには、庭いじりが好きがゆえに、ジャゴケやゼニゴケを駆除してしまう始末。
そして、「園芸好き」という観点からは、私のようなコケ好きは「コケ玉が好き、コケ庭鑑賞が好き」というイメージで話しが進んで行く傾向にあります。
というのが私の印象ですが、どうでしょうか。
★
今、毎日通っている造園系の講習で「植物管理学」という授業があるのですが、担当されている先生の一人、K先生の講義が楽しくて素晴らしいのです。
女性なのですが、凄まじい知識量と植物への愛情が溢れた、分かりやすい講義は、いつも聞いていて全く飽きる事なく、あっという間に3時間経過。
休憩時間には、質問したい生徒で列ができるので、ゆっくり先生に話しかける事もできず、もどかしい日々。
そんな先生が先日行った「取り木」の講義でのこと。
高木の取り木の仕方として、ミズゴケを使う方法があるのですが、その実演をしてくださった先生。
「ミズゴケは、高級なものは一本一本が長いんです。先に花のようなものがついているんですよ。本来はこのように生えていて、本当は緑色の綺麗なコケでねえ。しかもこれは、栽培できないので全て天然採りなんですよー。こうやって園芸用に乾燥されているので、もう死んでしまって茶色くなっていますが、実際は湿原などにわーっと綺麗に敷き詰められていて。。。そう、考えるとね、ちょっとかわいそうな人生ですけどねえ。。。」


これ、本当に些細な先生のつぶやきのひとつなんだけれども、私はすっかりノックアウト!
園芸をやる上でミズゴケの使用は欠かせないのですが、天然採りがゆえに、以前から個人的には複雑な気分。
でも、どうせ販売はされていくんだし、こうやって世間でガンガン使われるのだから、ならば、私が愛情もって使って行こう!という誰のためにもならん、意味不明な言い訳をしながら、結局使っておりました。
そう、コケあっての園芸といっても過言ではない?!
さすがコケ。ここでもさりげなく、人知れず、縁の下の力持ちを担っておるのであります。
でも、使う以上は、それがどんなものかせめて知って欲しいなー、そんな雑に無駄に使わんといて〜
『限られた貴重な地球の資源を使ってるんだよ、君たちは!』と思っていた私のうざったいコケ愛をまるで代弁してくれたかのような先生。
他の先生たちの講義でも、何度となく出てきて、実際に実習でも何度も使ってきたミズゴケですが、こんな素材にすら愛情ある講義をするのはK先生くらいなもの。
これを聞いた皆は、「そうなんだ〜! へえ!」となかなか驚いたご様子。
何の気なしに使っていた「ただの園芸材料」だって、立派な「植物」だったと認識した瞬間だったのではないでしょうか。
先生は、植物版「サカナ君」だとのことです。
高校、大学と専門に学んではいるけれど、植物が好きで好きで、オタクなのだと。
とってもラブリーな先生です
そもそも、税金で受講させてもらってるこの授業。
保険給付延長が目的とはいえ、少しでもコケと近いところに身を置きたい。
そんなカジュアルな動機でしたが、こんなに濃くて個性的な先生達に楽しまされるとは、期待以上でした。
あと、一ヶ月ちょっと。さみしくなるなあ〜


これは、箱根美術館の庭に鎮座するミズゴケ様。(2012年6月撮影)