神秘のヒカリ

ホイアンから、こちらも路線バスで1時間弱ほど揺られて向かうは「五行山」

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ここは、近年目覚ましく都市化・リゾート化されているダナンとホイアンの中間ほどにある場所で、
「マーブルマウンテン」とも呼ばれている大理石でできた山なのです。

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トレッキングコースとして整備されており、所々に洞窟や鍾乳洞に安置されている仏像を探検するように拝めるのです。
五行山は5つの連山からなり、
金、木、水、火、土の宇宙を構成すると言われている5つの要素がそれぞれの山に名づけられています。

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パワースポットと呼ばれるだけあり、あちこちで神秘的な光景。

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天井に開いた穴からは、光のカーテンが降り注いで仏さまを照らし美しい光景が圧巻なのですが、
この穴は、ベトナム戦争でアメリカ軍の空爆により空いてしまったものによる皮肉な結果。
わずか40年前に、この場所が最激戦地だったとはとても思えません。

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運動靴でライトを持参していないと、
見えない、登れない、というちょっとアドベンチャーな場所も。
本来は、こういったトレッキングや神聖な景色を見たいな、という目的で来たのでした。

そもそも、今回の旅先がベトナムに決まったものの、
私的に「コケっぽさ」のカケラも感じられる要素がなかったので、なにも期待していなかったのです。
それまで、チェンマイでは蘚苔林、カンボジアでは遺産と地衣類のコラボを十分に堪能してきたので、
多少の「ご当地苔」を味わえれば、と思っていたのですが、
滞在中に可能な行動範囲内には、目ぼしい場所がなかったのです。
そこで、すっかりやる気ない中の候補地として提案したのが、ココだったのです。

ところが、
五行山も半分ほどを進むと葉状体苔類が目につく。
riccia属が最初に目につき、続いて見えたマットは「ヒメジャか。。??」
ところが、近づくとどうも見慣れない雰囲気。

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ルーペで見ると、ますます見覚えがない。
まず、薄すぎる。そして穴(気室)が大きい!

うーむ。なんだろう。
アウェイな場所で、図鑑もないし見慣れないコケの正体なんて私にわかるはずもない。
と、潔く諦めて進んでいたのですが、
どうしても、進む先々で目に入ってきて仕方ない!

しかも

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しかも
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あれ、光ってない?

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光ってるでしょ!

ここでやっと「ヒカリゼニゴケ?!」とピンと来たのでした。

遡ること2012年、
蘚苔類学会の北海道大会で「ヒカリゼニゴケが54年ぶりに再発見された」という発表がありました。
実際は、ヒカリゼニゴケ科ヒカリゼニゴケ属になるため、
ゼニゴケの仲間になるわけではないのですが、
「ゼニゴケにも光るタイプがあるのか!」と印象的だったのが記憶に新しいのです。

日本国内では、熊本県の石灰洞のみで確認されていたが、この場所の一部が崩落してしまい、
その後の度重なる調査でも発見されず、2007年には絶滅種に指定されていたそうです。
そのため、自生の姿を拝める機会はないも同然となるレアなコケ。

「蘚苔類研究 第11巻 第5号 2015年8月」に掲載されている古木先生の「新・コケ百選」によると、
東南アジアには多いとのことで、五行山は石灰岩にあたるので、
これはますます疑っても良いのでは?と期待も募ります。
ただ、ヒメジャゴケも反射して光り、
未熟なヒメジャの葉状体は専門家も間違えるほどよく似ている。とも記載されています。

ヒメジャに関しては、1年中凝視する日々なので、
さすがにどう見てもヒメジャゴケには見えない。
先生に伺ってみたところ「ヒカリゼニゴケ属ですね」とのこと。
しかし胞子がなければ「それ以上は、まずわからない」とも。

見たものが仮にヒメジャゴケだったとしても、正直どっちでもよかったのかもしれません(笑)
見た目の違いや光具合など、
今まで見たことがない状態を確認したことになるので(あらゆるヒメジャを網羅したい!)、
それもまたラッキー♪と。

「光った光った!」と騒いで、
他の外国人に怪しまれないよう(一部の人に怪しまれた)
角度を変えて見物していたのですが、「光る」といっても
通常にルートを歩いている限りでは、ほぼノーマルモードなのです。
たぶん、ずっと目で追いながら歩いていたおかげで、角度の奇跡を体感できたのかなと思います。
こうして、ヒカリゼニゴケで頭がいっぱいの中、年末を迎え年を越しました。

すっかり苔類づいている昨今です。

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これが

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これです(わかるかな?)

五行山は、神秘的な光が降り注ぐパワースポットとして今やダナンの顔ですが、
密かに、人知れず、そっと光を放つ隠れたコケスポットでもあったのでした。

ちなみに、チェンマイでも同じコケを見て「なんだこれ!」と疑問に思っていたことを帰宅後思い出しました。
あの時は光ってもいなかったし、全くわからずでしたが、
まさか、すでに見ていたとは!

「関係ない!と言いつつ、やっぱりコケの名前を知りたい」というのは、
こういう事態を防ぐためでもあるのだよな〜とつくづく。

1

2
(2011年8月雨季のワット・ウーモンにて)

ウキゴケ!

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わーい!わーい!なモノを採集物から発見しました。

ウキゴケの胞子体。

カヅノゴケ(鹿角苔)とも言われ、アクアリウム界でとても人気があるコケです。
水中モノと陸上モノと。

こんな細いカラダで、どうやって胞子体をつくるんだろう?とずっと気になっていたのですが、
自分の家で育てているウキゴケに怪しい兆候がでることもなく、
図鑑などでも詳しく書かれておらず、
野外で特に見つけるコトもなく、今日まで至っておりましたが、
先日、採集した陸上型ウキゴケの中から発見できたのです。

そもそも、こんな風に裏返さないとわからないのですねえ。

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ここ最近は、要領も記憶力も悪いのだから、
身近なコケを一種、ないし一属に絞って集中観察するようにしています。
去年は、主にヒメジャゴケ。
今年は、ウキゴケ属。ハタケゴケの類をじっくり見ることにしており、
下半期は、他に気になるコケがあっても、ぐっとこらえてここに集中。。

「ハタケゴケ」とされていたものは、最近さらに4種に分類されていたりするし、
この「ウキゴケ」自体も平凡社の図鑑までは一種の掲載ですが、
新しい検索表では、ミゾウキゴケ、ホソバウキゴケ、ウキゴケと3種類になっていたりする。
手元には、3箇所分のウキゴケがあるけれども、それらがこの3種類のどれにあたるのかは、
いまいち判別がつかず、わからない。

イチョウウキゴケでさえも、実は2種類あるのでは?なんて興味深い話までちょうど出てきて、
コケ友達と、ハタケゴケの話で多いに盛り上がるのが楽しい最近。

そして、ふっと「苔類だらけじゃん。。」と気づくのです。

コケの同定について徒然3

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どこで入手したチラシか覚えていないが、手にした時から行くと決めていた展示。

神奈川県立 生命の星・地球博物館にて開催されている企画展です。
生き物を描く サイエンスのための細密画描画


この博物館は、蘚苔類の模型が展示されているので以前よりチェックはしていましたが、
遠いので何年も持ち越しに。
でもこの展示も、ぐずぐずしている間にもうすぐ終わりなので、今度こそ急がなければ!

▪︎

コケの同定をする際に、今まで写真を都度撮って保存しておく事や、メモをすることなどはしていたのですが、
あまりスケッチに力は入れてませんでした。

今年に入って「丁寧な観察。同定への心構え見直し」という目標を掲げて、
その秘訣そうなポイントにはどうやら”スケッチが大事そう”
と、再認識してからは、行く先行く先でスケッチネタに出くわす今年。

「学生にはまず最初にひたすらコケのスケッチをさせる」とはコケフォレー時に聞いたM先生からの話。
コケと紙と何往復も行き来しながら、見たものをそのまま描く練習。

この「そのまま描く重要性」に関しては、高知の牧野植物園で見た「太田洋愛展」でも語られていました。
牧野植物園

日本のボタニカルアートの先駆者・太田洋愛は、牧野博士が原点。
牧野博士が「精密ヲ要ス」とした植物図が現在にどのように受け継がれているのか、といった視点の展示。

◎陽光が感じられる絵を描きなさい
◎ボタニカルアートは構図が命
・メリハリある線を描く事が大事
◎目の前の植物を細部まで観察しながら描きなさい
・葉の先端に命がある
◎植物と同じ大きさに描く事を遵守する
・上達の秘訣はただひとつ、数多く描く事だけ
・身の回りにある見慣れた植物から描く
・植物の先生が一目みて、何の植物であるかわかる絵でなければならない

これらは、太田氏が牧野博士から受けた教えの最重要項目なようですが、
◎の内容は、私が習っていた(今年は1度しか行けていない。。)植物画教室の先生も毎回言っていた言葉。
ボタニカルアートにおいてのポイントですが、同定力アップのためのスケッチ術にも生かせるこの姿勢。

そんなこんなで、今年は夏以降は実際に丁寧にスケッチをしながら作業をするようにしています。
一種にかかる時間と手間が倍増し、ゆっくりゆっくりペース。
でも極端な例で、1年で100種の採集・同定をしても、別のフィールドで全く生かせないのなら(つまり忘れる)、1年で10種しか記録に残せなかったとしても、確実に身につけていった方が、10年後の差は大きそう。

というわけで、10月頭にどかんと体調をくずして体を甘やかしている間に、
すっかり10月が終わってしまいそうなので、「生き物を描く」展には近日中に行かねばなりません!




コケの同定について徒然2

そういうわけで、今更気付いたのか?と自分へのがっかり感が否めませんが、
今年はなるべく丁寧に観察するよう心がけています。
なかなかうまくはいきませんが。。。

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ところで、ここでいうところの「同定」とは、コケの種名を調べることです。
ざっくりな方法としては、まず

1,ルーペでじっくり見る
2,実体顕微鏡でじっくり見る。
3,乾燥していたらそのままでまず見てスケッチ、特徴メモ。濡れた状態でも再度確認&スケッチ
4,サイズ確認
5,葉を基から丁寧に取り外してとりあえず葉だけのプレパラートを作る。
6,生物顕微鏡で葉のカタチや基部や細胞やら細胞壁やら鋸歯やら乳頭やら油体やら細かいものを色々見てスケッチ。
7,すでに大まかな仲間が予測できている場合は、平凡社の図鑑でその科か属の検索表を順に辿る。
その過程で必要な処理が出れば行っていく(切片作りや、サクシの数確認とか、胞子の確認とか)
8,全く検討がつかない場合は、保育社の原色図鑑のイラストで絵合せをひたすらしていき、
それっぽいのを見つけたら、平凡社の写真でも確認したりしながら、検索表で確認していく。
違ってたらやり直し。
9.図鑑チェックで無事同定できた場合は、ルーペで再チェック。


微妙な違いはあれど、そして大雑把ですが、だいたい全体的な流れはこんな感じかと思います。
とりあえず、私はそうしているのですが、
1も2もそれだけで何十分も見ていることが時にあるので(見惚れている場合も。。)
大まかな仲間がわかっているものでさえ、最終的に行き着くまでにはひどく時間がかかります。
確実に種がわかっていても、詳細チェックをして記録するための、一通りの流れに則るとあっという間に時間がたつ。

まったく検討もつかないものに限っては、もはや時間の問題ではなくなります。
ここまでして、図鑑も一通り持っていてもなお、すんなりと同定できないのがさすが蘚苔類!
そしてわからないと、つい自分に都合よく持って行こうとしたり、
答えを急いでしまいがちです。無意識に。
だって、知りたいのに分からないんですもん。

ここが素人コケ同定の落とし穴!
気をつけなければいけません。

そんな私の煩悩を軌道修正してくれるがごとくのズバリ的を得た心得。
とある方が書かれたものを先生が生徒に配布し、それをさらにコケ友さんが私にも回してくださったのですが、
これが本当に役に立つ!
いただいてから数年経ちますが、読むたび毎回しみじみ納得してしまいます。
あまりにも良い内容だな〜と思って、岡山コケの会の会報にも掲載いただいたのですが、
その内容を引用、紹介させていただきます。
オカモス会員の方は、ぜひ何度も再読されてはいかがでしょうか。

会報やブログでの公開にご快諾くださったTさん、ありがとうございました!

《未知種の同定心得》※岡山コケの会ニュースNo39(15年2月号)に掲載

1 観察
一番良くないのは結果を急ぐ事だ。
「時間は無限にある」とのんびりした気分で向かうのが良い。
ここにかけた時間は決して無駄にはならない。「すべてを見尽くしてやろう」くらいの意地悪い気持ちも結構。
図鑑に書いていない有力な特徴に気づくこともある。
初めての種の時は、場所や個体を変えて複数回観察する。一点集中だと一を十だと思いやすい。
顕微鏡下で道草を楽しみ、グズグズ・キョロキョロ見回すのがよい。

2同定
同定の根拠を明文化すること。
同時に不安点もメモして残す事。
結論があっているかどうかより、自分が下した判断に責任を取れるかどうかが大切である。
当て物ではないのだから、正解が貴いわけではない。
自分に恥じるような決着をつけるより、まだしも「保留」する度量を!
敗退ではなく、楽しみを後に伸ばすと思えば良い。ここの部分だけを必死に頑張りがちなので気をつけよう。

3整理
他の近縁種と比較して、その種を特徴づける条件を3項目程度にまとめる。
これが種の個性を浮き彫りにすることになり、この作業を通じて理解が深まる。
検索表の経路は、通常は最良の理解形式とはいえない。
検索表は全種を振り分けるためのもので、そもそも目的が異なる。
特定の種を特徴づけるには無駄が多く、最適の形質が選ばれているとも限らない。
ここまで済んで、初めて「わかった」という気持ちがやってくる。

4実感
これはその種の像がありありと浮かぶかどうかの問題。
あるいは、肉眼やルーペだけで検討がつけられるかどうか。
もちろん曖昧であってかまわない。分析的な同定作業とは異質な認識なので、自分なりのイメージ作成、
またはどう思い浮かべるかの練習が必要になる。
文章で表現できない種類の感覚である。(例えば色や光沢、柔らかさ、姿…..)
直感的に把握できないと本当に自分のものだという気はしないものだ。
採集行為も楽しくない。
専門家は、この部分がすごい。見た途端に名前がわかってしまう。回数を重ねるとだんだんとそうなることもあるが、効率良くいきたい。



コケの同定について徒然 1

今年のテーマはずばり『丁寧に観察すること』
そして春以降、方々で同じようなテーマでの気づきに出くわす。
それは、結果的にコケの同定の仕方というか、勉強の仕方というか、まとめ方というか、
改めて、一から仕切り直すのが良さそうだ、というようなところから発展したテーマです。

要は、『進歩がないのは、同定が大雑把過ぎるんじゃね?!』という、見て見ぬふりだった事実を改めて実感しただけのことですが。。

素人が手を出す蘚苔類の世界は、楽しさを重視するべきであり、あちこちに目くじらたてる必要もない。
研究者でもないし、単位や学位も必要ない。修行でもない。
完全なるただの趣味、生きがい。好奇心の追求。

が、しかし、
やはりそこも落とし穴な気が何となくしていて。

「素人だからそこまではいいじゃん」とか「顕微鏡ないから仕方ないじゃん」とか「見た目が好きだからそれでいいじゃん」
と、素人なことや道具の有無を言い訳の盾に、難解なコケの世界から逃げて、
みすみす自分からコケに近づくのを諦めているような気もしなくもない。。。
まんまかつて自分が言い放っていたこのセリフ。
それは悪くもイケなくもないのですが、せっかく他の人よりもコケに目を向けているのに、
その良さに気付いちゃったのに、その先にいかない理由って一体何なんだろう?
やっぱそれって超勿体無くないか?
自分が好きだと言い切れるものの実態を知ら無いままでいるのは怠慢だ!
しかも、他の人が無知なジャンルをいい事に、知ったかぶるのは、恥ずかしいことこの上ない。
しかし同定は一朝一夕でできるものではなく、本当に難しい!
けれども楽しい! コケを知るって、このコが誰でどんなコか知るのってなんて楽しい!

この数年で変わった意識とともに、
そんな同定のアレコレも整理してメモしておこうかな、と思っています。




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プロフィール

よ2

Author:よ2
地味で共感を得難い、コケの魅力に取り憑かれ、観察や写真を撮りにでかけ、コケグッズを集めたり、つくったりの日々。コケ一色の毎日を綴るコケブログです。http://kokeiro.com